~シックハウス症候群に要注意~
アレルギーになりにくい家の建材の選び方

家で過ごす時間が多く、新型コロナウイルスなどの影響もあり、家の中の空気環境への意識が高まっているようです。空気清浄機や換気以外にも建材に気を付けることで空気環境は向上します。最近では施工性の良さなどから工業製品やプラスティック製の建材が多く使われていますが、健康的な視点ではかならずしも正解とはいえない建材も少なくありません。
今回は、家の中で大きな面積を占める「壁材」に着目し、その中でも快適な住空間をサポートする素材「漆喰」やその他、健康建材についてご紹介します。

【1】シックハウス症候群とは


「シックハウス症候群」とは近年、住宅の高気密化などが進むに従って、建材などから発生するホルムアルデヒド、キシレン、トルエンと呼ばれる化学物質などによって目がチカチカする、鼻水、のどの乾燥、吐き気、頭痛、湿疹など主に粘膜系への症状がおこることを言います。

人に与える影響は個人差が大きく、同じ部屋にいるのに、まったく影響を受けない人もいれば、敏感に反応してしまう人もいます。一度シックハウスを患うと、化学物質に過敏に反応するようになり、なかなか治すのが難しいため、非常に気を付けないといけない疾患です。

これらの化学物質は主に建材や家具の接着剤や塗料に含まれていることから、2003年に建築基準法で規制がかけられ、建材はホルムアルデヒドの含有量によってグレード分けされ、最上位グレードのものを「F☆☆☆☆(エフフォースター)」として認定しています。ただし、こちらはホルムアルデヒドのみであり、有害な化学物質は他にもあるため、F☆☆☆☆の商品を選んだからといってシックハウス対策は完璧ではありません。これらの商品を選ぶことに加え、シックハウスになりにくい建材を選ぶことが大切です。

【2】 「漆喰」はシックハウス症候群になりにくい建材


漆喰の歴史は古く、その原料である石灰は世界中で産出されてきました。ヨーロッパでは5000年も前から利用されていると言われており、古代エジプトのピラミッドや古代都市ポンペイ、古代ギリシャ神殿や古代ローマ時代の遺跡に多く見られます。またその効果からワインなどの酒蔵の壁にも利用されてきました。また、日本でも漆喰の歴史は古く、約1500年前の飛鳥時代にはすでに漆喰の技法は確立していたと言われています。江戸時代以降は、多くの城や商人屋敷の土蔵、神社仏閣などで使用されてきました。

このように漆喰は様々な効果を発揮することから、古くからあらゆる場所で重宝されてきました。次に具体的な効果についてご紹介しましょう。

① 「抗菌効果」
漆喰の原料となる消石灰は、菌が死滅する強アルカリ性であるため、大切なものを保管する蔵や、菌の管理が欠かせない酒蔵などで使われてきました。ペストや天然痘が流行した中世のヨーロッパでは、漆喰壁の家からは患者がほとんど出なかったそうで、その事実が漆喰の抗菌性の高さを証明したと言えます。

② 「防汚効果」
漆喰は、ビニルクロスのように静電気を発生させないので、ホコリを寄せ付けず、壁が汚れにくいというメリットがあります。

③ 「防臭効果」
漆喰を顕微鏡でみてみると無数の結晶があり、スポンジのような多孔質であることがわかります。その構造によって、漆喰は「臭いを吸着し、分解する」といわれているのです。

④ 「調湿効果」
「多孔質な構造が調湿効果を高める」と言われており、最初の抗菌効果と相まって防カビ材として優れた機能を発揮します。

⑤ 「防炎効果」
漆喰は1000度のバーナーで焼いても燃えず、有毒ガスや臭いも出さない優秀な建材と言えます。

【3】 漆喰以外にも健康に配慮した建材とは?


① 無垢フローリング
最近のフローリングは表面に薄くスライスした木材を貼った突板フローリングや木目柄をプリントしたシートフローリングが多く使用されますが、これらは多くの接着剤を使用します。接着剤には、規制されているとはいえ化学物質が含まれています。その点、無垢のフローリングは接着剤を使用しておらず、また調湿作用も期待できるため、カビやダニの発生にも予防効果があり、有害物質も吸着すると言われています。また天然の木材は肌触りもよく自然の香りやぬくもりを感じることができます。最近では床暖房対応の無垢フローリングもありますので選択肢として加えやすくなっています。

② ウールカーペット
カーペットはフローリングと比べて、ハウスダストなどが空気中に舞い上がることがありません。中でもウールカーペットは化学繊維のカーペットに比べて、静電気が起きにくく、ホルムアルデヒドなどの化学物質の吸着が早く、再放出しないという特徴があります。静電気が身体に溜まると血行不良や代謝が悪くなると言われるので、健康・美容の両面でもおすすめです。
また発火温度がかなり高いので燃えにくく、万が一の火災の時も安心ですし、天然素材なので土に還るのでエコロジーであるとも言えます。選ぶ時のポイントとしては「ウールマーク表示」のあるものを選ぶと安心です。

空気環境を大幅に改善することができる「漆喰」のように、住まいづくりにおいて素材選びはとても重要です。住宅カタログや実例集などではさまざまな健康建材のヒントが掲載されていますので、ぜひイメージを膨らませてください。

執筆・監修・情報提供:吉田美帆

一級建築士/インテリアコーディネーター/宅地建物取引士/武蔵工業大学建築学科(現東京都市大学)卒業、大手設計事務所にて小学校・保育園等の設計、マンションディベロッパーにて企画等を経て独立。執筆やセミナー、講演会など幅広く活躍する。
・1996年 武蔵工業大学卒業設計蔵田賞受賞
・2011年 国際森林年間伐材利用コンクール審査員賞受賞
・2016年 フランス国際映像コンペ(MCSD)受賞

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