在宅ワークも快適な空間づくりの秘訣

これまで家の中におけるワークスペースは、主に「家事室」や「趣味室」「DIY室」などの「生活の合間に作業する場」と捉えられていました。昨今の働き方改革やテレワークの普及によって、本業=オンタイムで働く場としてのワークスペースに注目が集まっています。そこで、これからますますニーズが高まる在宅ワークに対応する住まいづくりについてご紹介しましょう。

【1】 在宅ワークに適した間取り


「在宅ワーク」とひと言でいっても、仕事内容や時間、使用する道具や資料の有無などさまざまなケースが考えられます。そこで、ここでは各ケース別に間取りの取り方についてご紹介します。

まずは長期的に在宅ワークを行う方、仕事時間が不規則な方には、断然、個室がおすすめです。四方を壁で囲うことで遮音性が高まるので、家族の話声やテレビの音などを気にせずに仕事に集中できますし、またウェブ会議で議論が白熱しても気兼ねなく声が発せられます。豊富な資料を保管できる収納をデスクの近くに備えておけば、仕事の効率も格段にアップすることでしょう。ペーパーレスでパソコンだけあれば仕事ができるという方には、デスクと椅子が置ける2畳分くらいのスペースがあれば十分です。そのほか、個室とほぼ同等の独立性が保てるロフトを仕事部屋として活用する方法もあります。

スペースが限られていて個室の確保が難しい場合は、リビングの一角や階段下、2階の廊下などにカウンターを設置したり、デスクを置いてみてはいかがでしょうか? ただし、家族と時間やスペースを共有することになりますので、設置にあたっては注意が必要です。たとえば、家具や観葉植物を間仕切り代わりに置けば、家族の視線も遮れるうえ、独立性を高めることにもつながります。また、空間を上手に活用できるスキップフロアもおすすめです。階層が異なることで、仕事とプライベートのスイッチが容易に切り替えられますし、家族とも緩やかにつながれるワークスペースになります。

【2】 家の中で働きやすい環境を作るための注意点


自宅にワークスペースを確保するときに気を付けなくてはならないポイントは、セキュリティ対策はもちろんのこと、デスクや収納棚などの家具の配置や窓の位置、空調や照明、コンセントなどの電気設備を事前にしっかりと確認しておくことです。

仕事に集中したいならデスクは壁付けがベストです。一方、外の景色が眺められる明るい窓際にデスクを置く場合は、位置によってはパソコンに陽射しが反射して画面が見えづらくなることも。ご自身の仕事の内容を考えて、机と窓の位置は十分に検討しましょう。

また収納の確保も重要なポイントです。本や資料のほか、プリンターなどPC関連備品や文房具類は意外にスペースをとります。本棚などの収納家具を置けるスペースを用意したり、壁面に収納棚を設けるなど工夫が必要です。

そして、空調や照明、コンセントなどの電気設備も忘れずに確認すること。空調は部屋の広さや、ロフトやスキップフロアなどによって効果が異なりますので、プロの意見を参考に計画しましょう。照明は目が疲れにくい昼光色や昼白色を選び、全体照明と手元灯を組み合わせて選ぶとよいでしょう。また進化を遂げるデジタル環境に対応するためには、コンセントは多めに設置し、取り付ける位置にも配慮しておくことです。引っ越し後、コンセントが家具の裏に隠れてしまって使えないというケースはよく聞かれます。

【3】 在宅ワークに適した間取り


在宅ワークにおける主な課題は、家族、場所、健康です。

住まいと仕事が混在する在宅ワークでは、家族との距離感が最も重要な課題となります。たとえば、リビングの一角で仕事をしているとお子さんがいて集中できないなんてことも。そんなときは共有スペースとワークスペースの間にガラスなどの透過性の素材で仕切りを設けたり、大きな室内用窓を設けてみてはいかがでしょう。ワークスペースの独立性は確保しつつ、リビングで遊ぶ子どもたちの様子も身近に感じることができます。

また、ユニークな試みとして、ここ数年ブームが続く小屋を利用する方法もあります。リビングなどに置くスペースは必要となりますが、比較的、手軽に設置・撤去ができますし、小さなお子さんがいるご家庭では子どもの遊び場としても活用できるかもしれません。

一日の大半を家で過ごす在宅ワークでは、運動不足とストレスも気になるところです。意識的にオンとオフを切り分ける習慣をつけること、そして適度な運動とリラックスする時間を設けるように心がけましょう。

最近は仕事中の姿勢を補正するおしゃれなワークチェアも数多くありますし、健康と効率の両方で効果が期待できる昇降デスクなども登場していますので、そういった家具で補うのも一つの方法です。また緑視率(視界に入る自然の緑の割合)を高めるとリラックス効果が期待できるといわれていますので、観葉植物をデスクまわりにたくさん置くのもおすすめです。

今後、テレワークがもっと普及してくれば、仕事と暮らしがより密接となり、働く場、環境を家の中に整えることが当たり前になってきます。住宅カタログや実例集では、これからの住まいづくり、ワークスペースづくりの参考になるたくさんの事例を見比べることができます。失敗や後悔しないためにも、まずはカタログを取り寄せて、プロによる工夫やアイデアを基にイメージを具体化してみてはいかがでしょうか。

監修・執筆:石倉 夏枝(編集・ライター)

ヒントがいっぱい 住宅カタログの活用法 ヒントがいっぱい 住宅カタログの活用法