「住まいの空気環境」が大切な理由

全世界に蔓延している新型コロナウィルス。政府から「3密 密集・密閉・密接」を避けるような指示が出ていますが、そのうちの密閉を回避する手段が換気です。「24時間換気システム」などの法律に定められた換気方法を中心に、住まいにおける空気環境の重要性についてお伝えしたいと思います。
なぜ換気をしなければならないのか、また換気の効果はどのようなものなのかについてお伝えします。

【1】 現代の住まいに必要な換気システム


そもそも昔の住まいの換気はどうしていたのでしょうか? 換気扇もない時代に窓を閉め切った住まいの空気はどのように入れ替わっていたのでしょうか? 住まいにおける過去の文献を紐解きますと、兼好法師の徒然草にあるように、日本の家は夏の高温多湿な気候に配慮した建て方をしてきました。具体的には風通しに重点を置いた建築手法です。引き戸を多用した建て方は、換気のしやすさだけでなく、スキマ風が必然として発生し、そのスキマ風が換気として機能していました。平成に入った後の近年では日本の住まいが格段に改善されましたが、次の点から換気の重要性がクローズアップされるようになりました。

1.高気密高断熱住宅が増え、意図的に換気する必要が生じた
2.シックハウスいわゆるホルムアルデヒドの問題が増えた

そこで、「24時間換気」し続ける設備を設けることが法律で定められました。具体的には2時間で室内の空気が入れ替わるように、換気扇の位置と排出量を設計することが求められるようになりました。空気の流れも計算されており、外気のフレッシュな空気を居室へ取り入れ、廊下や水まわりの部屋を抜けることで、臭いや湿気などと一緒に不純な空気が、住まいの外部に排出されるように換気扇等の位置をレイアウトするようになっています。

主に住宅では「第1種換気」か「第3種換気」が採用されており、それぞれの特徴としては以下のようになっています。

換気方法について

「第1種換気」:全熱交換器システムのように断熱性やP M2.5、花粉の除去など、空気の質に配慮された仕組み
「第2種換気」:無菌室のなど不純物が入らないように室内の空気の「質」を管理したい場合に有効な仕組み
「第3種換気」:シンプルな方法でコストが抑えられ、リフォーム時などにも設置位置の変更がしやすい仕組み

【2】 換気しないと住まいはどうなる


では、住まいの空気を換気しなかった場合にはどのような問題が生じるかについて、お伝えしたいと思います。主に3点挙げられます。

1.有害物質が溜まる
2.二酸化炭素濃度が増える
3.結露が増える

どの項目も健康的な住まいを目指すためには、配慮したい内容です。人間が生活する中で空気はなくてはならない存在です。以下のような結果にあるように空気の「質」が非常に大切であることが見えてきます。

参照:パナソニック株式会社 ホームページ内「空気に含まれる物質が大事」

ホルムアルデヒドのような有害物質は最近の住宅では少なくなってきたものの、人が生活し、室内の酸素を消費し二酸化炭素の濃度が増えると以下のような影響が考えられます。

・息苦しくなり、頭が痛くなる
・眠くなる
・疲れやすくなる
・視力が落ちる

これらを回避するためにも住まいの換気が重要になります。ここで注意すべきは、エアコンや空気清浄機を付けただけでは換気はされないということです。意外なことにこれらの設備をまわすことで、換気がされていると勘違いしてしまう方が多いようです。

参照:パナソニック株式会社 ホームページ内「空気に含まれる物質が大事」

先にあげた、換気をしなかった場合の問題3点を回避するためにも、定期的に窓を開けてフレッシュな空気を取り入れることが重要です。交通量が多い場所や、花粉やP M2.5など周辺環境の影響で窓を開けられない場合には、機械換気で対応する方法も取り入れることも検討した方がよろしいかと思います。

【3】 住まいの温度と湿度は一定に保ち快適な環境を整える


では、どのような住まいであれば空気環境が快適になるかについてお伝えします。主に2点挙げられると思います。

1.部屋間の温度のバリアフリーが保たれた住まい環境
2.住まいの外周部の断熱性能が保たれた環境

温度のバリアフリーとは、部屋間の室温の差が少ないことを表す言葉です。住まいの温度を一定に保つことで、ヒートショックに代表される部屋間の急激な温度差が生じることで発生する心筋梗塞などの危険性を減少させると言われています。
実は住まいの中で発生する事故として、ヒートショックの危険性は以前より警戒されていますが、平成27年においても年間で17,000件ほど発生しているようです。(東京都健康長寿医療センター研究所調べ)

具体的な事例としては、暖房で温められたリビングから寒いトイレや浴室に入った時に発症してしまうことが多いことが有名です。これらは住まいの断熱性が低いことが要因として挙げられます。最近のユニットバス はより高い断熱効果があり、以前の断熱材の考慮されていないタイル貼りの浴室と比較すると、お風呂のお湯も冷めにくく安全性が高くなっています。建物の外周部分に高い断熱効果があれば、部屋間の温度差は少なくなり快適な環境が保たれます。つまり外周部の断熱性が高い住まいは、快適でもあり健康で安全な住まいでもあるということかと思います。

さらに換気システムで外部より給気される空気の温度も管理することで、より一層の快適さの向上が期待されます。具体的には「第1種換気+全熱交換器」タイプのシステムを備えた住まいでは、花粉などの不純物を除去した上で、温度調整されたフレッシュな空気を室内に取り込むことが可能になります。

換気の方法は法律で定められた方法で設置されていますが、住宅メーカー各社では、それぞれ独自の方法を採用していることが多いです。省エネや花粉除去などに特化したものや、建物全体を一つのシステムで管理するものなどもありますので、興味を持って検討されると健康のためにもよろしいかと思います。
併せて、今後は今まで以上に室内の「空気の質」にもこだわる必要があるかと思います。住まいを検討する場合には「空気環境」をどのような方法で保たれているのかを、ぜひご自身の目で確認されることをおすすめします。

※当記事は2020年5月7日の情報を基に作成しております。

監修・情報提供:金内 浩之(一級建築士)

株式会社Lakke(ラッケ)一級建築士事務所代表。
大学卒業後、大手ハウスメーカ―の設計担当として16年、約400棟の設計を経験。

ヒントがいっぱい 住宅カタログの活用法 ヒントがいっぱい 住宅カタログの活用法