すっきりした目覚めを促すベッドルームの作り方

「なんとなく疲れやすい」「集中力が続かない」など、日々の暮らしの中でこんなことを感じたら、それは睡眠不足のサインかもしれません。睡眠は心と体を休息させるとともに、明日を元気に迎えるための心と体のメンテナンスと考え、「量」はもちろん「質」もしっかり補いましょう。

【1】 なぜ、今、睡眠にこだわるのか


成人に必要な1日の睡眠時間は7時間前後といわれています。しかし、日本では6時間以下の短時間睡眠者が多く、平均睡眠時間は先進国の中で1,2位を争うほど短いのが現状です。

私たちは眠りにつくと、浅い眠りの「レム睡眠」と、浅い眠りと深い眠りを繰り返す「ノンレム睡眠」が交互に現れます。レム睡眠は、体はリラックスしていますが、脳は比較的活発に活動している状態を指し、このときに人は夢を見るといわれています。一方、ノンレム睡眠は、大脳を休ませるとともに、成長ホルモンの分泌によって細胞の修復や体の成長など体内の代謝活動を促している状態です。
ノンレム睡眠は、心(脳)と体を休ませるとともに、ストレスに負けない心と体を作ることにつながるのです。

しかし、このノンレム睡眠が充分に得られず慢性的な寝不足が続くと、日々の暮らしに影響が及ぶだけでなく、高血圧や高血糖、さらには糖尿病や狭心症、心筋梗塞などの生活習慣病の発症リスクが高まるといわれています。また、近年はうつ病や不安障害などの精神疾患、認知症などの発症の可能性があることも明らかになってきました。そのほか、ホルモンの分泌バランスが崩れることで太りやすくなったり、肌荒れの原因になることも。

このように睡眠は、ただ疲れを取り除けばいいのではなく、心と体の修復のために質のよさにもこだわることが大切です。

【2】 寝心地抜群のベッド・枕の選び方


快眠のために必要となる要素には、マットレスや布団、枕などの寝具類があります。

住宅の洋風化が顕著となった昨今、一般家庭におけるベッドの普及率は過半数を占めているといわれています。そのベッドを使用するうえで、もっとも重要となるのがマットレスの選び方です。人間は立っていると重力は下に向かって働きますが、体が横になると重力は頭、胸、骨盤にかかります。柔らかいマットレスの場合、その重力のかかる3カ所がマットレスに沈み込んでしまい、自然な寝姿勢がとれなくなります。反対に硬すぎるマットレスの場合は、寝ている人の体重が腰や背中を圧迫してしまい、寝苦しさを感じることも。

マットレスに求められる快眠のポイントは、正しい寝姿勢を維持し、スムーズな寝返りを促す弾力性です。メーカーによって弾力性は微妙に異なりますが、おすすめは身体にかかった圧力を分散するポケットコイルや高弾性ウレタンフォームのマットレスなど。マットレスを選ぶときは直接上に寝転び、ご自身にあった寝心地、弾力性を確認してください。

また、「枕が変わると眠れない」とこぼす人も多くみられるように枕選びも重要です。枕は寝ている人間の体をサポートするもの。そのため、枕の選び方は性別や体格はもちろん、仰向けや横向きなどの寝姿勢によっても大きく変わってきます。仰向けの寝姿勢を好む人は、横から見たときに首の骨が緩やかなS字を描く高さの枕がよく、横向きの寝姿勢を好む人は、横から見たときに首の骨がマットレスと平行に近い高さを目安に枕を選ぶとよいでしょう。
最近の枕は、素材や形、大きさもバリエーションに富んでいます。なかなかご自分にあった枕が見つからないという人は、専用の測定器でもっとも適した枕を提案してくれるメーカーやショップがありますので相談してみてください。

【3】 +αで睡眠は変わる


質のよい眠りを促すため、寝室の照明や温度、色など環境への配慮も欠かせません。

その中でも、もっとも大切なのが「光」です。眠る前にたくさんの光を浴びてしまうと睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌量が低下し、よい眠りが得られません。メラトニンの分泌量は光と体内時計でコントロールされているので、眠る前の1時間前までには主照明からベッドサイドなどの間接照明に切り替えるなど、室内の灯りを選べるようにしましょう。このとき、間接照明のランプはオレンジ色の光を灯す電球色を選ぶと、より効果が高まります。
また、最近は眠る寸前までスマートフォンを見て過ごす人も多いと思いますが、多くのブルーライトを発するスマートフォンは体内時計を狂わせ、睡眠を妨げる要因となります。眠る1時間くらい前にはネットの閲覧やSNSの利用、メールのチェックなどは控えるようにしましょう。

温度や湿度も快眠には欠かせない重要なポイントです。人は深部体温が下がると眠りにつきやすくなります。スムーズに入眠するためには、夏場の室温は約25℃~26℃、冬場の室温は約22℃~23度が好ましく、湿度は50%~60%が理想的といわれています。また、眠る前に熱いお風呂に入ると、交感神経を刺激し、深部温度も下がりにくくなってしまうので、なかなか寝付けないなんてことも。眠る前の入浴は39~40度のお湯に15分浸かるくらいを目安にしましょう。

そして、色にも快眠を促す効果があります。質の高い眠りを得るためには、気持ちを高める交感神経よりも、気分をリラックスさせる副交感神経を優位にさせる必要があります。この副交感神経に効果的に働く色が、青や青緑などの寒色系です。そのほか、ベージュやアイボリー、ピンクなども快眠を促す色としておすすめです。まずは、カーテンや寝具などの手軽に変えられるファブリックからもっとも落ち着く色を取り入れ、全体のカラーコーディネートを楽しんでみてはいかがでしょうか。

質のよい睡眠が得られないと日常の生活や仕事にも支障をきたします。それだけ睡眠は大切な行為です。「おうちじかん」の増えた現在、よりリラックス効果を高める空間づくりが欠かせません。住宅カタログや実例集では、これからの住まいづくりはもちろん、寝室のコーディネートやレイアウトなど参考になるたくさんの事例を見比べることができます。失敗や後悔をしないためにも、まずはカタログを取り寄せて、プロによる工夫やアイデアを基にイメージを具体化してみてください。

監修・執筆:石倉 夏枝(編集・ライター)

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