豊かなお風呂時間の秘訣

寒さが一段と増してきたこの季節は、熱めのお湯に浸かって体の芯まで温まりたいものです。日本人にはなじみ深いこの入浴スタイルは、体を清潔に保つだけではなく、心身共にリラックスする特別なものといえるでしょう。そこで、今回は日々の暮らしに欠かせないお風呂時間についてご紹介しましょう。

【1】 私たちの暮らしに欠かせない入浴


入浴のもっとも重要なことは体の汚れを取り除くことですが、もともとは「身を清める」という宗教的な意味合いが強くあったようです。しかし、江戸時代にたっぷりのお湯に首まで浸かる「据風呂」が生まれ、庶民の間で広く普及していきました。今では、体の汚れを落とすだけではなく、入浴することで健康やリラクゼーション、美容などのさまざまな効果が期待されています。

それでは、具体的にどのような効果があるのでしょうか?
一般的に入浴に適したお湯の温度は42℃といわれています。私たちの体は温かいお湯につかると、皮膚の毛細血管や皮下の血管が広がり、血の流れがよくなります。そうすると体内の老廃物や疲労物質が取り除かれ、コリをほぐしてくれます。また、浴槽内の水圧が足に溜まった血液を押し戻して心臓の動きを活発にし、血液の循環を促すことで全身の血行がよくなります。さらに、お湯の浮力が筋肉を緩ませてリラックス効果を高めたり、お湯の抵抗を利用して筋肉を強化することも。

お湯に浸かることは心身をリラックスさせる効果がありますが、就寝前に入浴するときは37℃~40℃くらいのお風呂に浸かるのがベストです。42℃以上の熱いお風呂に入ると交感神経が優位に働いて緊張状態に陥り、寝つきが悪くなるといわれています。快眠のためには、寝る1~2時間くらい前に少しぬるめのお湯にゆったりと浸かると、副交感神経が優位となって寝つきがよくなります。

【2】 お風呂を快適にするポイント


浴室には大きく2つの工法があります。
1つは、広さや浴槽・タイルなど素材をお好みで選べる「在来工法」です。個性的な浴室を望んでいる方や、広さや形など変形したプランの場合に適した工法です。ただし、現場で作業していくので工期が長くなるというデメリットがあります。
もう1つは、工場でパッケージ化した部材を現場で組み立てる「システムバス(ユニットシステムバス)」です。こちらは短時間で施工が容易なことに加え、清掃性や保温性など機能面で優れています。

お風呂を快適にするポイントは何といっても「換気」です。
湿度の高い日本ではなおさらバスルームは雑菌やカビの温床になりがちなので、浴室に「窓」を設けるだけではなく、換気扇や浴室乾燥機能なども備えておくと、日々のお手入れが格段にラクになるでしょう。また、床材や浴槽などは水に濡れて滑りやすくなるので、素材選びも慎重に。タイルは表面にざらつきのあるものや、サイズの小さいもののほうが滑りにくいといわれています。そのほか、脱衣所との段差解消や手すりの設置なども事前に確認して備えておくとよいでしょう。

また、冬は急激な温度差によって血圧や脈拍が上昇するヒートショック現状が起こりやすくなります。高齢者の方がいるご家庭では、浴室や脱衣所に暖房装置を設けるなど対策を行うことをおすすめします。

【3】 お風呂時間のお助けアイテム


これまでの入浴中の楽しみといえば本や雑誌を読むなどでしたが、最近はインターネット環境が格段に発達したことで、入浴中も気軽にテレビやYouTubeを見たり、音楽を聞いたり、SNSをしたりと楽しみ方も変わってきました。浴室内に高画質の大型ワイドスクリーンを取り付けたり、天井にスピーカーを埋め込んだりと、浴室がよりエンターテイメント性を高めた空間へと進化しています。

そのほか、「ジェットバス」や「多機能シャワー」もおすすめです。「ジェットバス」は、浴槽内のお湯を循環させながら泡状のお湯を勢いよく噴出させてマッサージ効果を促すもので、血の巡りがよくなることから美肌効果やリラックス効果も期待できます。またヘッドから出るお湯の量やパターンが調整可能な多機能シャワーは、たとえば、霧状のお湯で皮脂汚れを効果的に洗い流したり、継続的な強力水流でマッサージ効果を促したり、まるで打たせ湯のように勢いのあるお湯を強く出すなど、お好みの吐水パターンを選ぶことができます。最近では、浄水機能や節水機能を高めたシャワーも登場し、選択肢がさらに広がっています。

そして、ここ数年でもっとも注目を集めているのが「サウナ」でしょう。家庭用として普及しているのは、細かい霧状の温かいミストが全身を包む「ミストサウナ」があります。大きな特徴は低温でありながら高い湿度が得られること。「ドライサウナ」のような熱気による息苦しさもなく、湿度が高いので肌や髪にもやさしいと女性にも好評です。ユニットバスの中にはミストサウナ機能を備えたタイプもあるので、興味のある方はメーカーに問い合わせてみてください。

上記はすべて機能面においてのおすすめでしたが、それ以外にも入浴時間を楽しむ工夫はたくさんあります。たとえば、窓から庭の木々の緑が見られるようにしたり、月明かりや星空が眺められる天窓を設けたり。また照明の灯りを少し落として幻想的な雰囲気を演出したり、お気に入りの入浴剤やアロマオイルなどを持ち込んで癒しの空間を演出してもいいでしょう。

入浴は心身をリフレッシュする場でもありますが、小さなお子さんのいるご家庭ではコミュニケーションを育む場にもなります。お風呂で遊べる知育玩具などもたくさんありますので、それらも活用しながら楽しい入浴時間を過ごしてみてください。

1日の疲れを取り除き、気分をリフレッシュできる入浴は、私たちの暮らしに欠かせません。その時間をより楽しく過ごすために参考となるのが、プロによるさまざまな工夫やアイデアが詰まった住宅カタログや実例集です。たくさんの事例を見比べて、ご自身の理想とするお風呂時間をイメージしてください。役立つヒントがきっと見つかるはずです。

監修・執筆:石倉 夏枝(編集・ライター)

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