人とペットがいい関係になる家づくり

ペットとの暮らしは人に幸せを与えてくれます。ペットは大切なパートナーで家族の一員です。ペットと暮らすためには、人もペットもお互いが快適で楽しく暮らせる工夫が必要です。また、ペットには、お散歩や餌の用意にお掃除、お留守番などいろいろなケアが必要です。毎日のことなので人間もペットもお互いが快適で楽しく暮らせるようにしたいものです。
そんなペットとの幸せなおうち時間をつくる間取りの工夫や注意点、さらにお勧めの設備などについてご紹介いたします。

【1】 ペットとすごす心地よい暮らしとは


話すことができないペットへの配慮は飼い主となる人の責任です。
最近では愛猫も愛犬も健康や安全、ペットの心理的なストレスの軽減などから室内で飼う人が多く、家の中での快適さが求められています。

そんな飼い主のお悩みで多いのは、ペットの臭いや家具や床などへの傷、トイレの後始末、抜け毛や室内温度調整、キッチンや浴室などの侵入による事故など。これらの衛生面や健康面、安全面への配慮は人にとってもペットにとっても大切なことです。
また、ペットの行動特性に合わせた幸福感を満たすための空間構成や設備なども配慮がされるようになってきています。

さらには、ペットも高齢になり、若い頃は元気に家の中を動きまわっていても、いずれ足腰が弱り不自由になってきます。そんなペットの老後にも配慮した家づくりが大切となります。

【2】 愛猫との快適な家づくり


自由気ままで我が道をいく雰囲気が愛らしい猫。最近では、感染症や交通事故防止の観点からほとんどの家庭が室内飼いをしています。外に出られないため運動不足になりがちですが、猫の習性を知って、健康でのびのびと暮らせるような工夫をしてあげましょう。ここでは、猫にうれしい家づくりポイントをご紹介します。

①キャットウォーク&タワー
猫は高いところが好きな生き物です。敵もいないし、獲物を見つけるのに高いところから見下ろす習性があります。梁などを利用したキャットウォークやキャットウォークにつながるステップ状のキャットタワーがあると、運動不足の解消にもなります。

②ロック機能付きペット用ドア
猫は自由に動きまわりたいもの。室内で飼う以上、なるべく行動範囲を広げてあげたいけれど、部屋のドアを開け放しにできないこともあります。そんな時に有効なのは、部屋の入口に取り付けるペットドア。ロック機能付きのものにすれば、留守番時など入って欲しくない部屋には鍵をかけて制限できるので、猫も人も快適です。

③爪とぎ柱
猫は爪とぎをする習性があり、家の壁などがボロボロになって困ると聞いたことがあるはずです。それを解決するために、猫の動線上に爪とぎ柱を設置することで、壁や家具で爪をとがれることが少なくなります。

④陽だまり窓スペース
猫は日向ぼっこや外を眺めるのも大好き。窓辺でくつろげるよう、窓台を広めにとってあげましょう。人もそんな猫を眺めて楽しむことができるので、窓スペースはお薦めです。

⑤侵入防止の引戸
猫は家中どこでも遊びまわります。そのため物を落としたり、ごみをひっくり返したり、人にとっては片付けが大変なことも。かといって後付けのフェンスだとせっかくのインテリアがもったいないので、入って欲しくないエリアには引き戸などで区切れるようにしておくと良いでしょう。

【3】 愛犬との快適な家づくり


いつも家族と一緒にいたい人懐っこい犬。なるべく一緒にいてあげたいものの最近は共働き家族が増えて、一緒にいられないときやお散歩ができないときも。そんな時でも運動不足にならないように、愛犬の健康と飼い主が楽にお世話ができる家づくりポイントをご紹介します。

①お庭のドッグラン&室内の回遊動線
毎日元気に外をお散歩できれば良いのですが、どうしてもお散歩に行けない時や、お散歩だけでは運動量が足りない時、また高齢になって外でのお散歩が難しい時などには、家の庭で自由に走ることができるドッグランや室内をぐるぐる回れるようにする回遊動線のある間取りにすることがお薦めです。庭は土だと汚れますので、芝やヒメイワダレソウなどを植えると良いでしょう。
*茎が地面を這うように伸びて広がり、びっしりと地面を覆う緑のカーペットのように育つ植物。

②広めの土間&土間収納
玄関や勝手口の近くにリードなどのお散歩グッズが収納できる土間スペースがあると便利です。また、リードを着脱する際にはゆとりのある土間スペースを設けるとスムーズです。日常的に行われるお散歩のちょっとした準備や後片付けなどの手間が楽になります。

③足洗い場
玄関ポーチ脇に足洗い場があると、散歩から帰ってきた時に、家の中に汚れを持ち込まずにすみます。お湯の出る洗い場ならペットにも人にも快適です。

④足腰に優しい床材
硬いフローリングなどは、小型犬や老犬には足腰に負担がかかり痛めてしまいます。フローリングはスギやパイン材などの針葉樹が柔らかいのでお薦めですが、傷が付きやすいというデメリットもあります。傷が気になるという方はカーペットにすると良いでしょう。

⑤丸ごと洗えるマルチシンク
お風呂でペットを洗う場合、腰をかがめて洗うため足腰に負担がかかります。小型犬などは、楽な姿勢でシャンプーしてあげられるマルチシンクがあるとシンクの中でそのまま洗えるので便利でしょう。大型犬の場合は、ペット対応の頑丈な風呂フタなどがあるので、その上に乗せて洗うとちょうど良い高さになります。

今回は、ペットにも人にも優しい家づくりのヒントをご紹介しました。これらのアイデアを取り入れれば「おうちじかん」がより楽しく快適なものになるはずです。住宅カタログや実例集などではペット共生住宅の事例も掲載されていますで、是非イメージを膨らませてみてください。

執筆・監修・情報提供:吉田美帆

吉田美帆
一級建築士/インテリアコーディネーター/宅地建物取引士/武蔵工業大学建築学科(現東京都市大学)卒業、大手設計事務所にて小学校・保育園等の設計、マンションディベロッパーにて企画等を経て独立。執筆やセミナー、講演会など幅広く活躍する。
・1996年 武蔵工業大学卒業設計蔵田賞受賞
・2011年 国際森林年間伐材利用コンクール審査員賞受賞
・2016年 フランス国際映像コンペ(MCSD)受賞

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