快適で健康的な空間づくりに不可欠~室内換気のポイント~

夏のおとずれの前に恵みの雨がしっとりと降りそそぐ季節ですね。湿気が苦手な方は体調を崩してしまいがちなこの季節、住まい環境を整えることで体調にも良い変化をもたらすことができます。住まいを整えるというと、つい目に見える部分に意識がいきがちですが「空気環境」もとても大切です。住まいの空気環境を整えるために一番簡単で基本的なのは換気をしっかりとすることです。
今回はそんな換気の重要性と効率の良い換気方法についてご紹介します。

【1】 換気が重要なわけ


部屋の空気は基本的に無色透明なので、汚れているのか分かりにくいのですが、実際には汚染物質がたくさん含まれています。二酸化炭素に一酸化炭素、ハウスダストや花粉、ダニなどのアレルゲン物質、ホルムアルデヒドなどシックハウスの原因になるような化学物質、カビなどの細菌やウィルスなど様々です。

これらを換気せずにそのままにすると、カビなどは増殖し、汚れた空気がより一層汚れていき心身に不調をきたす恐れがあります。ひどい場合には、シックハウスなどを発症するようになってしまいます。

昔の日本の住まいはほとんどが木造で、気密性とは無縁のほどよい隙間風が吹くような家のつくりでした。ところが近年、冷暖房の効率をあげるために高気密高断熱の家をつくってきたために、シックハウスなどの危険性が高まってしまいました。そのため換気の重要性が見直され、2003年以降の住宅には24時間換気システムの設置が義務付けられるようになりました。
24時間換気システムとは、窓を開けなくても居住空間の空気を室外の空気と入れ替える設備のことです。

また、ここ最近のコロナ禍において、より一層換気の重要性がうたわれるようになってきました。

【2】 効率的に換気をするには


具体的に換気はどのように、そしてどのぐらいの頻度ですれば良いのでしょうか。

建築基準法では居室は毎時0.5回、つまり2時間に1回の換気が定められています。また最近では厚生労働省が新型コロナウィルス対策として、毎時2回という建築基準法より多い目安を設けています。ですので、最低2時間に1回、できれば30分ごとに1回換気するようにすると良いでしょう。窓をあける時間については、窓の大きさや空気の流れによっても違うのですが、5分~10分ぐらいをお勧めします。

以上は自然換気といって、窓などを開けて自然な空気の流れを利用しておこなう換気の目安ですが、前述の機械換気による24時間換気システムを常時運転させていれば、計算上、自然換気は必要ないということになります。ですが、空気の流れは目に見えにくく、機械のダクトを通した空気よりも窓から直接入る自然な空気のほうが気持ちも良いものです。気が付いた時に、窓は開けるようにすると良いでしょう。
24時間換気システムのスイッチを夜は消すという方がたまにいらっしゃいますが、スイッチは24時間つけっぱなしにするようにしましょう。理由としては、24時間換気をすることで、柱や梁など住宅の躯体に使われる素材の腐食やサビ防止など、住宅の耐久性の維持にも役立つと言われています。そのため、24時間稼働させ、フィルターの掃除・交換などを定期的に行うのが、正しい使い方です。

【3】 換気には空気の流れを計画することも重要


換気をおこなう際に、1つの窓を開ければ良いと思っている方は意外と多いのですが、これだと効率的な換気は行えません。換気は空気の流れがあってはじめて有効的に作用するので、理想は対角線上に窓があり、両方開けることで空気が効率的に流れて入れ替わる状態です。

1部屋に窓が1つしかないということも多いですが、その場合は、ドアを開けて家全体で換気できるように工夫します。また暖かい空気は上に、寒い空気は下に流れる性質があるので、窓の高さも変えるとより効率の良い換気ができます。

ただし自然換気の場合は、夏の暑い日や冬の寒い日などに窓を開けることで、せっかく空調機で快適にした室温の空気が逃げてしまうことや、花粉の季節やPM2.5が気になる日など、窓を開けることがためらわれる時があります。そんな時にお勧めなのが、全熱交換器です。全熱交換器とは、外の新鮮な空気を取り込みながら、室内の温度変化をおさえることができる換気システムです。最近は、この換気システムを取り入れるハウスメーカーも増えてきました。

エアコンをつけておけば自動的に換気が出来ると思う方もいるのですが、実際はエアコンで換気はできません。室内の空気を温めたり冷やしたりしているので、換気の効果は残念ながら無いのです。ですので、空調設備(エアコン等)+全熱交換器にすれば、空調効率を高く保ちながら換気ができるので、自然換気によって温度変化の起きやすい季節も安心して利用できます。

換気をしっかりとして、空気環境を整えれば「おうちじかん」がより快適なものになるはずです。住宅カタログや実例集などでは、換気設備のことについて掲載されていますので、ぜひ確認して家づくりのヒントを探してみてください。

執筆・監修・情報提供:吉田美帆

吉田美帆
一級建築士/インテリアコーディネーター/宅地建物取引士/武蔵工業大学建築学科(現東京都市大学)卒業、大手設計事務所にて小学校・保育園等の設計、マンションディベロッパーにて企画等を経て独立。執筆やセミナー、講演会など幅広く活躍する。
・1996年 武蔵工業大学卒業設計蔵田賞受賞
・2011年 国際森林年間伐材利用コンクール審査員賞受賞
・2016年 フランス国際映像コンペ(MCSD)受賞

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