vol.09
2022.03
築●十年 この家どうする!?
建て替えかリフォームか? 賢い選択術
リフォームか建て替えか、漠然と考えていてもなかなか結論は出せません。選択のための判断ポイントを、法規制・耐震度・ライフプラン、コストと資金計画といった4つの視点からお伝えします。
法規制で考える
建て替え、すなわち新築の場合は、現在の法規制に則る必要があります。まずは敷地の接道条件を満たしているか確認しましょう。建物を建築するには、敷地が2m以上道路に接している必要があります。もし、既存の建物が建築された当初に比べて、敷地が減るなどして接道が2m未満になっていたら、法規上、新築をすることができませんので、リフォームという選択になります。
また、新築できる場合でも、希望する規模や構造の建物を建てられるかも確認しましょう。
例えば、高度地区指定での北側斜線など、建築当初は無かった法規制が指定されていたり、敷地の形状が変わったりしたことで、建て替えると建物の規模が既存のものより小さくなる場合があります。また、防火指定になっていると、現在が木造であっても建て替える際は火災に強い構造の建物にしなければなりません。建築コストも相応に高くなったり、建物規模に制約が生じたりします。建て替えても、法規制の関係で、希望する規模や構造の建物にできないのであれば、リフォームを選択した方がよいということになるのではないでしょうか。
耐震度で考える
コストを費やして外見だけリフォームしても、地震に耐えられなければ心配ですね。まずは現在の建物の耐震性を調査して実態を把握しましょう。1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準の建物だけでなく、昭和56年以降の新耐震基準の建物であっても、耐震力が低い場合があります。2000年(平成12年)以前に建築した建物については、耐震診断をお勧めします。
そして、耐震診断の結果を踏まえて、どの程度の耐震力を確保したいか、それがリフォームで可能か、そのためにかかる費用が高過ぎないかを検討しましょう。
リフォームで行う耐震改修にコストが大幅にかかるのであれば、建て替えた場合とのコスト比較をしてみましょう。
ライフプランで考える
終の住み家にするのか、子どもたちが引き継ぐかなど、今後のライフプランも展望しながら、今、どうしておくと良いかを考えましょう。例えば二世帯住宅にして親世帯と子世帯で一緒に住む計画があるならば、お互いが気兼ねなく住めるような間取りがリフォームで可能かどうか検討してみましょう。構造上、柱や壁を動かせないことで思うような間取りにできなければ、せっかくリフォームしてもお互い居心地が悪く二世帯での生活が続かないということにもなりかねません。リフォームによる間取りの変更が難しければ、建て替えを選択することで理想の間取りの二世帯住宅にして、将来にわたって安心して暮らせるようにしたいですね。
コストと資金計画で考える
敷地の状況や法規制によっては、工事費が割高になることがあります。
道路が狭かったり、敷地との高低差が大きかったりすると、建築資材の搬出入に手間がかかるぶん、建築コストは割高になります。防火指定の区域では建て替えだと耐火建築物にしなければならないので、一般的な木造より建築コストが高くなります。建て替えの場合、コストアップの影響はリフォームに比べて格段に大きくなる可能性があります。また、建て替えには、解体工事費や設計監理料、各種申請料といった諸経費にも注意して比較検討しましよう。
一方で、リフォームでコストをかけた割には効果や満足度が得られなかったという結果になっては、建て替えた方が良かったという後悔につながります。費用対効果を意識して検討しましょう。
例えば地盤が悪い場合、改修ではコストがかかる割には技術的に限界がある場合が多いので、建て替えで杭基礎等にする場合とで、比較検討することをお薦めします。
資金調達の方法には、建て替えもリフォームも、自己資金やローンの利用が考えられます。自己資金を使う場合は、建築費に費やした結果、手元に残る現金が少なくなって、生活資金やいざという時の出費に支障をきたすということがないよう注意が必要です。
ローンは借りられる金額ではなく、「無理なく返せる金額か」という点が大切です。
シニアの方向けには金利だけを返済して、亡くなった際に住まいを売却して元金を一括して返済するリバースモーゲージローンの種類が増えています。
現在、住宅に関して、税金などの優遇、支援制度がいろいろあります。建て替えには、行政単位で助成金の制度を設けている場合もあります。こうした制度は期限が定められているものがほとんどですのでタイミングを逃さないようにしてください。リフォーム、建て替えそれぞれの資金計画を立てて比較してみてはいかがでしょうか。
まとめ
建て替えかリフォームか迷っている間、不便や不安や不満をかかえながら人生を送るのはもったいないですね。冷静な視点でひとつひとつ整理していくと自然と結論が見えてくるかもしれません。上記を参考に建て替えかリフォームか選択し、便利、安心、満足の住まいを実現して頂ければ幸いです。