注文住宅を建てるのに必要な土地探し。今回は、最新の首都圏の不動産動向と希望にあった土地の見つけ方やチェックポイントについて解説します。

首都圏の不動産動向

　3月23日に令和4年地価公示価格が発表されました。地価公示は国土交通省が標準値を選定し、毎年1月1日時点の1㎡あたりの正常な価値を判定し公示するものです。その結果は、国土交通省および都道府県から発表されます。

　全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも２年ぶりに上昇に転じました。三大都市圏では、全用途平均・住宅地が東京圏、大阪圏、名古屋圏でいずれも２年ぶりに上昇に転じ、商業地が東京圏、名古屋圏で上昇し、大阪圏は横ばいに転じました（図①）。

〈図①〉

　住宅地においては、都市中心部の希少性が高い住宅地や交通利便性等に優れた住宅地では上昇が継続し、その周辺部にも上昇が拡大しています。
　東京都の住宅地は、区部全域の変動率は1.5％プラスとなり、全23区でプラスでした。多摩地区全域の変動率は 0.5％となり、17 市で変動率がプラス、4市1町で 0.0％、5市1町でマイナスでした（図②）。

〈図②〉

　神奈川県の住宅地の変動率は0.2％と上昇に転じ、東京都心から 40km 圏内にあり、利便性、接近性が良好な川崎市、横浜市東部や中心部及び相模原市中央部から南部において、再び上昇に転じるなど、上昇地点が前年より増加しました（図③）。

〈図③〉

　千葉県の住宅地の変動率は0.7％と上昇を維持し、沿線別で、総武線・京葉線沿線（千葉市中央区～市川市、浦安市）、東京湾アクアラインの結節部（君津市、木更津市、袖ケ浦市）、常磐線・つくばエクスプレス沿線（松戸市、流山市、柏市）など、計26市区町が上昇しました。
　埼玉県の住宅地の変動率は0.5％と、昨年の下落から上昇に転じました。約7割の地点で上昇又は横ばいで、特に、都心に近い浦和駅、川口駅、浦和美園駅、武蔵浦和駅の徒歩圏内で利便性の高い地点の上昇率が目立ちました。

希望に合った土地の見つけ方

　希望に合った土地を見つけるために、「資金計画」「希望整理」「現地確認」の3つは重要です。

　資金計画では、土地や建設費のほかに必要経費を負担します。必ず考慮しましょう。反面、「不動産価格＋必要経費＝資金計画」ではありません。住宅ローンは、現在の収入から返済できる範囲で借入れしなければなりません。返済可能な金額から借入が出来る金額を逆算し、自己資金を加算した金額が、購入資金となるのです。不測の事態に備えて、余裕のある返済から計画することが大切です。

　不動産は一生を左右する買物です。夢や希望が膨らめば、不安もあります。購入の相談では、希望を一枚の紙に書きだすよう、その希望には具体的な理由を添えるよう、アドバイスしています。そして重要なのが、書きだした希望に優先順位を付けることです。残念ながら100％希望を叶える不動産はありません。この優先順位があれば、実際に不動産を見た時に「この希望は譲れないけれど、あの希望なら譲れる」と、納得した決断ができます。

　土地は、必ず最寄駅から歩いて確認します。街並みや住環境だけでなく嫌悪施設の有無、土地の高低差や境界標、道路や電柱、日照や水はけ、隣地建物の距離や窓の位置などを確認します。前面道路はその幅員だけでなく建築基準法上の指定も確認します。土地の一部に建築ができないなど制約があるからです。また道路が私道の場合は、工事関係者の通行や地面の掘削など所有者の承諾が必要です。承諾書の取得を確認しましょう。

土地選びのチェックポイント

「土地選びのチェックポイント」は一覧表（図④）にしています。特に、災害などの地歴、周辺環境が急変する可能性・となり近所の様子は、忘れずにチェックしましょう。

〈図④〉

　土地が絞り込めたら、売買の注意事項にも目を向けます。売却の失敗原因となる「価格決定」「権利確定」「売主責任」の3つは、購入側にも大切な要素です。
　チラシに書かれた売り出し価格は売主の希望価格です。値引き幅も含まれていることがありますので、それを算出した経緯を必ず確認しましょう。納得した価格決定ができます。
　権利には、所有権や借地権など土地利用の権利だけでなく、ほかの権利にも注意が必要です。境界線の上にはブロック塀などの工作物があり、上空では枝葉などが越境していることがあります。土地の所有権と工作物などの所有権は異なりますから、それは誰の所有か、越境はどのように解消されるのか、確認しなければなりません。
　売却側には説明責任と契約不適合責任を負う義務があります。その説明は書面とともによく聞きましょう。また万一、契約不適合が発生した場合の購入側の対処について（図⑤）、仲介する不動産業者に教えて貰いましょう。

〈図⑤〉

　契約する際には必ず事前に書類を確認します。書類には重要事項説明書と売買契約書があります。重要事項説明書は、契約前に購入者へ不動産の概要と契約の内容を説明する書類です。特記事項から確認しましょう。売買契約書は代金の支払方法や期限が書かれています。購入者にとって重要な住宅ローン条項は必ず確認してください。

　最後に、失敗しない不動産購入の極意を伝えます。「たくさんの土地や建物を見学して、自分自身で見極める力をつけること」です。不動産に詳しい方は稀です。しかし、たくさんの不動産を見学するうちに「この土地は私の希望に合うけど、あの土地はこの条件が合わない」など、経験が高まってきます。いざ気に入った不動産に出会ったときは、即断即決で購入申込をしなければなりません。経験による決断力が重要です。これから土地を探す皆さんには、たくさんの土地や建物を見学することを勧めます。